差し込み印刷は、Excelで作った名簿を、Wordの文書に1件ずつ自動で流し込む機能です。
「形は同じで、一部だけが1件ずつ違う」書類を、ひな形1枚と名簿1つから一括で作れます。
先に結論です。
- 手順は4段階。Excelで名簿を作る → Wordでひな形を作って名簿とつなぐ → 差し込む位置を指定する → 一括で出力する
- 出力先は印刷だけではありません。全件を1つのWordファイルにまとめることもできます
- 数件で1回きりなら手作業、数十件を超えるなら差し込み印刷が有利です
- Excel側の名簿の作り方に約束事があります。知らずに始めると「日付が数字になった」「0が消えた」で詰まります
この記事に出てくる用語
- ひな形 … 全員に共通する部分をあらかじめ作っておくWord文書。1件ずつ変わる部分だけを空けておく
- 差し込みフィールド … ひな形に置く「ここに名簿の◯◯列の値を入れる」という目印。画面では «氏名» と表示される
差し込み印刷とは|名簿とひな形を組み合わせる
使うファイルは2つです。
- Excel: 名簿。1行が1件(1人・1社)。列は「氏名」「住所」「金額」などの項目
- Word: ひな形。共通の文面を作り、1件ずつ変わる場所に目印(差し込みフィールド)を置く
差し込みを実行すると、Wordが名簿を上から順に読み、その値を目印へ当てはめます。
できあがるのは行の数だけの文書です。名簿が100行なら100枚になります。
| 場面 | 1件ずつ変わる部分 |
|---|---|
| 案内状・招待状 | 宛名 |
| 請求書 | 宛先・金額・請求番号 |
| 宛名ラベル・封筒 | 郵便番号・住所・氏名 |
「差し込み文書」タブが見当たらないときは、まずブラウザーで開いていないかを確認してください。
差し込み印刷はパソコンに入れるデスクトップ版だけの機能で、無料のWord(Word for the web)にはありません。
文書より上に「〇〇.com」のような住所欄や「←」の矢印が見えていれば、ブラウザーです。
右上の「編集」(鉛筆のアイコン)→「デスクトップ アプリで開く」で開き直せます。
この項目が無ければ、そのパソコンにデスクトップ版が入っていません。
基本の手順|Excelで名簿、Wordでひな形
手順1: Excelで名簿を「表だけ」の状態に作る
トラブルの多くは、Word側の操作ではなくExcel側の名簿の作りが原因です。
名簿の約束事
- 1行目を見出し行にする(「氏名」「郵便番号」「住所」など)。表の上にタイトルや作成日を書かない
- 途中に空の行・空の列を入れない
- 結合セル(複数のセルをつなげて1つにしたもの)を使わない
- 名簿はブックの1枚目のシートに置く
- 郵便番号の列は、入力する前に列全体を「文字列」にしておく。 列番号をクリックして列を選び、「ホーム」タブの「数値」グループにある書式の一覧から「文字列」を選びます。数値のままだと先頭の0が消えます
1行目の見出しは、Word側で「どの列を差し込むか」を選ぶときの名前になります。
表の上にタイトル行があると、Wordがそれを見出しと読んで列の対応が崩れます。
すでに0が消えている名簿を使う場合は、あとから書式を変えても0は戻りません。
名簿のいちばん右の列のすぐ隣(間を空けない)の1行目に「郵便番号2」と見出しを付けます。
その下の1件目の行に次の式を入れ、名簿の最後の行までコピーしてください。
=IF(B2="","",IF(ISNUMBER(B2),TEXT(B2,"0000000"),B2))
B2は、自分の名簿で郵便番号の1件目が入っているセルに読み替えます。
0が消えていた件だけが7桁に戻り、ハイフン付きの件や空欄はそのまま残ります。
差し込みには、元の列ではなくこの「郵便番号2」を使ってください。
電話番号の0も同じように消えますが、直す式が違います。
こちらは顧客リストの名寄せをExcelだけでやる手順で扱っています。
日付と金額にも注意が要ります。
画面で「2026年8月17日」と見えていても、Wordに渡るのはセルの中身の値だけです。
見た目の設定は渡らないので、日付が5桁の数字になったり、金額のカンマが消えたりします。
直し方は日付が数字になる・カンマが消えるときの直し方にまとめました。
差し込みの作業中は、Excelブックを閉じておいてください。
開いたまま編集すると、保存していない変更が差し込みに反映されません。
手順2: Wordでひな形を作り、名簿とつなぐ
- Wordで、全員に共通する文面を普通に作る。宛名など1件ずつ変わる部分は空けておく
- 「差し込み文書」タブの「差し込み印刷の開始」をクリックし、「レター」を選ぶ
(案内状や手紙など、1枚ずつ配る文書の選択肢。同じメニューの「通常のWord文書」は差し込みを解除する項目なので選ばない) - 同じタブの「宛先の選択」→「既存のリストを使用」をクリックし、手順1で作ったExcelファイルを選ぶ
- 「テーブルの選択」画面で名簿のあるシートを選び、「先頭行をタイトル行として使用する」にチェックが入っていることを確認して「OK」
この時点では見た目は変わりませんが、裏側でひな形と名簿がつながった状態になっています。
手順3: 差し込みフィールドを置いて、プレビューで確認する
- 宛名を入れたい位置にカーソルを置く
- 「差し込みフィールドの挿入」をクリックすると、名簿の見出しの一覧が出る。入れたい列(「氏名」など)を選ぶ
- 文書に «氏名» のような目印が入る。敬称の「様」は、目印のすぐ後ろに普通の文字として入力する(全員に共通する文字はひな形側に置く)
- 「結果のプレビュー」をクリックすると、目印が名簿の1件目の値に置き換わる。「次のレコード」ボタン(▶。名簿の次の1行に進む)で2件目、3件目と送って確認する
確認は最初の1件だけで済ませないでください。
名前や住所が長い人の件を見ます。
行の折り返しやはみ出しは、値が長いときに初めて起きるからです。
手順4: 「完了と差し込み」で出力する
「完了と差し込み」をクリックすると、出口が3つ出てきます。
| 選択肢 | 何が起きるか | 向く場面 |
|---|---|---|
| 個々のドキュメントの編集 | 全件が並んだWord文書が1つ作られる | 全件を見たい・手直ししたい・PDFで保存したいとき |
| 文書の印刷 | 全件を続けて印刷する | 確認が済んでいて、あとは紙にするだけのとき |
| 電子メール メッセージの送信 | 1件ずつ別々のメールとして送る | メールで配るとき(条件が多い。下記) |
いきなり「文書の印刷」で全件を出すのは避けてください。
まず「個々のドキュメントの編集」で全件を1つの文書にして流し見るか、印刷画面でページ範囲を指定して数件だけ試し刷りします。
崩れたまま100枚印刷する事故を防げます。
メール送信はOutlookが既定のメールソフトである必要があるなど条件が多く、CCやBCCも付けられません。
この記事では扱いません。
買い切り版(Word 2024・2021・2019・2016)でも手順は同じ
Microsoftの公式手順は、Microsoft 365・2024・2021・2019・2016を対象に同じ内容で案内されています。
Windows版ならタブ名もボタン名も共通で、この記事の手順はどの版でもそのまま使えます。
メニューの場所を覚えるのが面倒なら、「差し込み印刷の開始」の一番下にある「差し込み印刷ウィザード」が使えます。
画面の右側に出る案内に沿って選ぶだけで、同じ結果になります。
手作業と何が違うのか|減るのは入力より「確認」
100人分の案内状を手作業で作るなら、宛名を書き換える作業を100回繰り返します。
そのうえで、貼り間違いや直し漏れがないかを100枚ぶん名簿と見比べることになります。
差し込み印刷なら設定は1回で、名簿の値がそのまま入ります。
「Aさん宛の文書にBさんの名前が入る」という混線は、仕組みの上で起きません。
間違うとしたら目印の置き場所のような「形」のほうで、全件に同じように出ます。
数件見れば気づけます。
減るのは入力の手間よりも、全件を1枚ずつ見比べる確認の手間です。
使うべきかの判断基準|「件数」「繰り返し」「作るもの」
分岐点1: 件数と繰り返しで決める
差し込み印刷は、名簿の整備・接続・目印の配置という準備が件数に関係なく固定でかかります。
手作業の書き換えは件数に比例します。この釣り合いで決めます。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 数件で、1回きり | 手作業。1通作ってコピーし、宛名だけ書き換えるほうが早い |
| 数十件を超える | 1回きりでも差し込み印刷。転記ミスと全件確認の重さが効いてくる |
| 毎月・毎年繰り返す | 件数が少なくても差し込み印刷。2回目からは名簿を更新するだけで終わる |
| 金額や氏名を間違えられない文書(請求書・証明書) | 差し込み印刷に寄せる。手作業は「どこか1件」を間違え、その1件を探す確認が重い |
分岐点2: 作りたいものに合った入り口を選ぶ
同じ差し込みでも、作りたいものによってはレイアウトが用意済みの入り口があります。
| 作りたいもの | 使う機能 |
|---|---|
| 案内状・請求書・証明書などの文書 | この記事の手順(「差し込み印刷の開始」→「レター」) |
| はがきの宛名面 | 「差し込み文書」タブの「はがき印刷」→「宛名面の作成」。縦書きや郵便番号の枠が用意済み(Windows版だけ) |
| 市販のラベル用紙 | 「差し込み印刷の開始」→「ラベル」。用紙のメーカーと製品番号を選ぶとマス目が組まれる |
| 封筒への直接印刷 | 「差し込み印刷の開始」→「封筒」 |
分岐点3: 向かないケース
- 1件ごとに文面の構成が大きく変わるなら向きません。 差し込みは「形は同じ、値だけ違う」が前提です。1件ずつ全部違うなら、個別に作るほうが早く終わります
- 名簿がまだExcelの表になっていないなら、今回は手作業も選択肢です。 紙やPDFを表に起こす作業のほうが本体になるからです。ただし繰り返すなら、一度表にすれば次からは差し込むだけです
つまずきやすい箇所
ひな形を開き直したら、見慣れない警告が出た
後日ひな形を開くと、「この文書を開くと、次のSQLコマンドが実行されます」という確認画面が出ます。
英字に驚いて「いいえ」を押したくなりますが、これは「名簿ともう一度つないでよいか」という確認です。
自分で作った差し込み文書なら「はい」を選んでください。
「いいえ」を選ぶと名簿と切り離され、宛名が入らなくなります(その場合も「宛先の選択」からつなぎ直せます)。
プレビューに1件目しか出ない
これは仕様です。
「結果のプレビュー」は1画面に1件ずつ表示し、「次のレコード」で送りながら見る作りになっています。
全件をまとめて見たいときは、「完了と差し込み」→「個々のドキュメントの編集」で全件が並んだ文書を作ります。
日付が5桁の数字になる・金額のカンマが消える・郵便番号の0が落ちる
手順1で触れた「値だけが渡る」仕組みによるもので、操作ミスではありません。
直し方は日付が数字になる・カンマが消えるときの直し方で扱っています。
郵便番号の0が消える件は、手順1に書いた式でも戻せます。
名簿を直したのに、Wordの表示が変わらない
名簿の修正がすぐ反映されるかは環境によってまちまちです。
確実なのは、Excel側を上書き保存して閉じてから、Wordのひな形をいったん閉じて開き直すことです。
開き直すときに上の確認画面が出るので、「はい」を選べば最新の内容でつながり直します。
まとめ
- 差し込み印刷は、Excelの名簿とWordのひな形の組み合わせ。名簿の行数分だけ文書を一括で作る
- 名簿は「1行目が見出し・空行と結合セルなし・郵便番号は文字列」に整えてからつなぐ
- 数件で1回きりなら手作業、それ以外は差し込み印刷。繰り返す作業なら件数が少なくても有利
- 日付・金額・郵便番号の表示崩れは仕組みによるもの。起きたら切り分けの記事へ進む
この記事の確認範囲
- 手順とメニューの名前は、Microsoft 365・2024・2021・2019・2016 が対象です
- 日本語版Wordの画面での話です
- ブラウザー版に差し込み印刷はありません。はがき印刷はWindows版だけです
- Mac版は対象外です(画面の作りとボタン名が異なります)


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