この記事に出てくる用語
- AIチャット … ChatGPTやClaudeのように、文章で頼むと文章で答えてくれるサービス。この記事の実例は、この種のAIに頼んだ場面のものです
- 一括置換(いっかつちかん) … 文章の中の決まった文字を、まとめて別の文字に置き換える操作。WordにもExcelにもある機能で、AIチャットにも頼めます
- ダッシュ … 横棒を長く伸ばした形の記号。文の中に挟んで、間や補足を表すときに使われます
- 一次情報 … 誰かの紹介やまとめを経ていない、大もとの情報。公式サイトの説明・料金表・書類の原本などがこれにあたります
結論|AIの間違いには型があり、型ごとに聞き返す一言が決まっている
AIの間違いをその場で見抜くのに、専門知識は要りません。
間違い方には型があり、型ごとに、聞き返す一言が決まっているからです。
覚えるのは、次の5つの質問です。
| # | AIのようす | 聞き返す一言 |
|---|---|---|
| 1 | 画面に見つからない機能・メニュー・関数を教えてくる | 「その機能は、公式の説明のどこに書いてありますか」 |
| 2 | 手順を出してくるが、そのとおりにやると動かない | 「その手順の次に、画面に何が出ますか」 |
| 3 | 前の発言と食い違うことを言う | 「さっきは◯◯と言いました。どちらが正しいですか」 |
| 4 | 根拠の見えない数字を出す | 「その数字はどこから来ましたか」 |
| 5 | 「できました」「直しました」と報告してくる | 「どうやって確認しましたか」 |
この5つは、答えが返ってきた「あと」に使う質問です。
一括置換のような、やり直しにくい作業のための一言が、もう1つあります。
それが、実行の「前」に使う「置き換える前に、対象を全部見せてください」です。
理由は実例2で説明します。
なぜAIは、自信満々に間違えるのか
AIチャットは、文章を理解して答えているわけではありません。
「次に来そうな言葉」を選び続けて、文章を組み立てています。
この作りのせいで、「知りません」より、それらしい答えを書くほうが自然になります。
やっかいなのは、確認していないことも、確認したように書けることです。
本当に調べて書いた文と、その場で組み立てた文とで、文体は変わりません。
だから「自信がありそうかどうか」では見分けられません。
これは故障ではなく、いまのAIチャットに共通する性質です。
待っていれば無くなるとは限りません。
見分けるには、文面を眺めるのではなく、こちらから聞くことです。
実際に確認したAIと、していないAIとでは、答えの具体さに差が出やすいからです。
5つの質問の使いどころ
質問1「その機能は、公式の説明のどこに書いてありますか」
AIは、実在しない機能名・メニュー名・関数名を作ってしまうことがあります。
教わったメニューが画面のどこにも見つからず、探し続けて時間だけが過ぎるのが典型的な失敗です。
画面を探し始める前に、書いてある場所を聞いてください。
答えがぼやけたり、急に「別の方法もあります」と言い換わったりしたら、その機能を疑ってください。
場所を答えてきたら、そのページ名で公式サイトの中を検索して、実在するかを確かめます。
見つかれば公式の説明を読み、見つからなければ、その機能はあてにしません。
それらしいページ名が返ってきても、機能が実在する証拠にはならないからです。
質問2「その手順の次に、画面に何が出ますか」
手順の形をしていても、AIが頭の中で組み立てただけの手順のことがあります。
そのまま進むと途中で止まり、どこまでが正しかったのかも分からなくなります。
やり始める前に、手順の途中を1つ選んで「この次に、画面に何が出ますか」と聞いてください。
次に出る画面をぼかさずに答えられない手順は、実行する前に別の方法を探すほうが早いです。
質問3「さっきは◯◯と言いました。どちらが正しいですか」
やりとりが長くなると、AIは前に言ったことと食い違う答えを出すことがあります。
しかも、食い違ったことを断らずに、新しい答えを出してきます。
気づいたら、前の発言をそのまま引用して、どちらが正しいかを聞いてください。
「違います」とだけ返すのは遠回りです。
何と何が食い違っているかを示すほうが、正しい答えに早くたどり着けます。
質問4「その数字はどこから来ましたか」
料金・件数・日付のような数字も、AIはそれらしい値を作ってしまうことがあります。
数字は具体的なほど信じたくなりますが、具体的であることと正しいことは別です。
その数字が「調べた数字」なのか「計算した数字」なのかも確かめてください。
調べた数字なら、資料の名前や公式ページを答えられるはずです。
計算した数字なら、「計算の過程を見せてください」と頼めば、途中の式ごと確かめられます。
どちらも返ってこない数字は、使わないでください。
質問5「どうやって確認しましたか」
「できました」「直しました」という報告と、結果が本当に合っていることは別です。
確認の方法を聞けば、確認していないことが表に出やすくなります。
返ってきた答えの見分け方
質問を投げたら、答えの中身より先に「具体さ」を見てください。
実際に確認したAIの答えには場所・画面・出どころが入り、していないAIは一般論に戻りがちです。
ただし、具体さは最低限の条件であって、保証ではありません。
確認していないAIも、それらしいページ名を作れます。
具体的な答えが返ってきたら、その場所を自分で開いて確かめてください。
| 質問 | 進んでよい答え | 疑う答え |
|---|---|---|
| 1 機能の場所 | 公式ヘルプのページ名や、画面のどこにあるかを言える | 「一般的に搭載されています」で済ませる |
| 2 次の画面 | 次に出る画面の名前や、表示される文言を言える | 「画面の指示に従ってください」とぼかす |
| 3 どちらが正しいか | 理由付きで片方を選び、もう片方を訂正する | どちらにも触れず、第3の答えを出す |
| 4 数字の出どころ | 資料名や公式ページを挙げる。計算なら過程も見せる | 「一般的には」「目安として」で済ませる |
| 5 確認の方法 | 何を、どの手順で確かめたかを言える | 「問題ありません」と結論だけ繰り返す |
疑う側の答えが返ってきたら、使わないでください。
一次情報(大もとの情報)を開くか、作業を小さく分けて頼み直します。
質問1をさらに確実にする2つの習慣
質問1は、その場で1回聞くだけでなく、毎回の決まりごとにもできます。
習慣1|URLを毎回出させて、自分で開く
調べものを頼むときに、「参考にしたページのURL(アドレス)も毎回出してください」と先に頼んでおきます。
URLが出てきたら、そのページを開いて、答えに書いてあることと突き合わせます。
出してもらうだけで終わらせないでください。
実在するページでも、答えの内容が本当に書いてあるとは限らないからです。
「URLは出せません」と返ってきたら、それは正常な応答です。
出どころの無い答えだと分かった時点で打ち切れます。
習慣2|調べていないと分かったら、調べてから答えてもらう
AIチャットには、学習した知識だけで答える場合と、その場でWebを調べてから答える場合があります。
URLや出典が出てこないのは、調べていないサインかもしれません。
学習した知識には日付の区切りがあり、それより後の変更(料金・仕様・画面の名前)は入っていません。
「最新の情報は分かりません」と自分から言うこと、画面の名前が実物と違うことも、同じサインです。
そう感じたら、「調べてから答えてください」と頼み直してください。
ただし、サインが出ないこともあり、調べたうえで間違えることもあります。
調べた答えが返ってきたら、質問1に戻って、URLを開いて突き合わせてください。
実際に起きた3つの失敗
実例1|「調べました」の測り方が、人の操作と違っていた
AIには「試して確かめて」という頼み方もあります。
Excelのファイルを開いて動きを試せるAIチャットもあり、その「確かめました」の中身が違っていた例です。
Excelには、別のファイルの数字を式で参照する機能があります。
「参照先の数字を変えたら、参照している側の式は追いつくのか」をAIに調べてもらうと、
「参照先を変えても、古い数字のままでした」と返ってきました。
ところが、この測定には穴がありました。
AIがファイルを開いたときの設定が、「リンクを更新しない」になっていたのです。
更新しない設定で開けば、古い数字が出るのは当たり前です。
知りたかった「更新が効くかどうか」は、測れていませんでした。
実際には、「更新する」設定で開けば結果は逆になります。
参照先の数字の変更には追いつき、古いままになるのは、参照先のファイル名が変わったときや、ファイルが消えたときです。
最初の報告は、結論そのものが間違っていたことになります。
効くのは「その測り方は、実際に人がやる操作と同じですか」の一言です。
AIは「測りました」とは言いますが、どういう条件で測ったかは、聞かれない限り書かないことがあります。
「試しました」「検証しました」という報告には、すべて同じ一言が使えます。
実例2|一括置換で、文が壊れた
「文中のダッシュを、全部『。』に置き換えて」と頼んだときのことです。
AIは全部を置き換えて、「◯箇所を置換しました」と報告してきました。
ところが、置換のあとの文章は、一部が壊れていました。
ダッシュには、文と文をつなぐ使い方と、説明を挟むために2つで1組にする使い方があります。
2つで1組のものまで1つずつ「。」に変えたため、文の途中に句点が割り込みました。
元 この記事の前提——何も入れられない——では、Windows 10 は対象外です
置換後 この記事の前提。何も入れられない。では、Windows 10 は対象外です
報告は嘘ではありません。
問題は、一括置換の失敗は、実行した後では気づきにくいことです。
件数の報告に納得すると、壊れた文は残ります。
この型には、実行前の一言を使います。
「置き換える前に、対象を全部見せてください」。
先に一覧を見れば、「これは2つで1組だ」と人の目で気づけます。
一括削除・並べ替え・形式の変換でも同じです。
まとめて変える作業は、実行前に対象の一覧を見せてもらってください。
実例3|「直しました」の後で、頼んでいない場所が壊れていた
「1行が長すぎるので、文ごとに改行して短くして」と頼んだときのことです。
AIは改行を入れて、「◯行を分割しました」と報告してきました。
一見、指示どおりの仕上がりです。
ところが、ところどころで太字の飾りが外れ、記号がそのまま画面に見える状態になっていました。
その文章は、ボタンではなく、言葉の前後に付けた記号で太字の範囲を決める形式でした。
この書き方では、範囲の途中で改行が入ると、飾りが効かなくなることがあります。
残った記号の取り方はAIの文章に残る「**」が消えないときにあります。
分割そのものは指示どおりで、報告にも嘘はありません。
指示していない部分が壊れたことに、AIが気づいていなかったのです。
効くのは、質問5「直した後、どうやって確認しましたか」です。
AIは「頼まれたことをやったか」は見ますが、頼まれていない部分が無事かは見ないことがあります。
WordやExcelでも、差し込み欄・目次・数式のように仕組みで入っている部分は、途中を切ると崩れます。
何かを直してもらったら、直した場所の周りまで見てください。
迷ったら、「この修正で影響が出る場所は、ほかにありますか」と聞くのも手です。
3つの失敗に共通すること
3つとも、報告の文面は自然で、件数の数字も入っていて、嘘も書かれていませんでした。
間違いの正体は、報告に書かれていない部分にありました。
実例1なら測った条件、実例2なら置き換えた対象の中身、実例3なら確認したかどうかです。
だから、報告を何度読み返しても見抜けません。
書かれていないことは、聞かないと出てこないからです。
聞き返すときのコツ|疑うためではなく、早く着くため
5つの質問は、AIを問い詰めるためではなく、正しい答えに早くたどり着くための確認の手順です。
AIは、聞き返すと素直に直ることが多いです。
そのときは「違います」とだけ言わず、「◯◯になるはずが、実際は△△になっている」と並べてください。
聞き返しは、同じ会話の続きで行ってください。
会話をまたいだ引き継ぎは、当てにできるとは限りません。
閉じた会話の答えを点検したいときは、その答えと頼んだときの条件を、新しい会話に貼り直します。
直ってきた答えを、そのまま信じないことも大切です。
1回目に自信満々で間違えたAIは、直した2回目も同じ調子で書いてきます。
大事な作業なら、直った答えにも、同じ質問をもう一度当ててください。
それでも同じ間違いが繰り返されるなら、決まった前提を箇条書きにして、新しい会話で頼み直すほうが早いです。
それでも残る限界|最後の確認は、人にしか出せない
5つの質問でできるのは、怪しい答えをその場で絞り込むことまでです。
質問への答えがどれだけ具体的でも、それ自体がまた組み立てられた文である可能性は残ります。
⚠️お金・締切・法律の数字は、必ず一次情報で確かめる
間違えたときの被害が大きく、あとから取り返しのつかない数字は、質問で済ませてはいけません。
料金は公式の料金表を、期限は公式の案内を、決まりごとは原文を、自分の目で開いて確かめてください。
AIの答えは、その一次情報にたどり着くための入口として使います。
| 場面 | 確かめ方 |
|---|---|
| すぐやり直せる作業(文章の下書き・調べものの入口) | 5つの質問で絞り込めば足りる |
| やり直しにくい作業(一括置換・ファイルの移動) | 実行前に、対象を全部見せてもらう |
| お金・締切・法律に関わる数字 | 質問で済ませず、一次情報を自分で開く |
この記事の確認範囲
- AIの答えは毎回変わります。同じ頼み方をしても、同じ失敗が同じ形で起きるとは限りません
- 質問をしても、記事のとおりに間違いが表に出るとは限りません。気づく確率を上げるものです
- 実例1の話は、参照先の数字の変更・ファイル名の変更・ファイルの削除の3つまでです。ほかの変え方でどうなるかは分かっていません
- 特定のAIサービスどうしの比較ではありません。サービスの名前ではなく、間違い方の型の話です
まとめ
- AIの間違いには型がある。型ごとに、聞き返す一言が決まっている
- 覚えるのは5つ。書いてある場所・次に出る画面・どちらが正しいか・数字の出どころ・確認の方法
- やり直しにくい作業だけは、実行前の「対象を全部見せてください」で防ぐ
- 報告の文面では見抜けない。確認していないことも、確認したように書けるのがAIだから
- お金・締切・法律の数字だけは、質問で済ませず、一次情報を自分の目で確かめる
- まず1つ選ぶなら、質問5「どうやって確認しましたか」。「できました」の報告が来るたびに使える


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