AGIはいつ来るのか|答えが記事ごとに違うのは、5つの別々の場所で話が進んでいるから

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この記事に出てくる言葉
  • AGI … 「汎用人工知能」と訳される言葉。何を指すかは使う人によって違う(この記事の主題)
  • Copilot Cowork … Microsoftの画面のひとつ。メールの送信や書類の作成を、本人の代わりに実行する
  • 一般提供 … 試験の段階が終わり、対象の利用者に正式に配られている状態

結論:その記事がどの定義で言っているかを先に探す

今すぐやること

AGIの記事を開いたら、本文に次の言葉があるかを探します。

  • 「経済的に最も価値のある仕事」 … 開発元が掲げている目標の話
  • 「上位1%」「レベル4」 … 能力を段階に分けて測る枠組みの話
  • 「学習の効率」 … 試験の成績で測る立場の話
  • 「汎用AIモデル」 … 法律の言葉。いろいろな用途に使えるAIの本体を指す
  • 「専門家パネル」 … 会社どうしの契約の話。外部の専門家が判定する仕組み

どれも出てこない記事は、年だけを言っています。
その記事からは、自分の仕事が変わるかどうかは分かりません。

事務の仕事にいま効いているのは、年ではありません。
メールの送信や書類の作成を代わりに実行する機能が、すでに配られていることのほうです。
その機能は、重要な操作の前に止まって許可を求めてきます。
許可を出す画面が出たら、宛先と中身を読んでから、[送信]([投稿])のボタンをそのまま押します。これは1回だけの許可です。
そのボタンの横の[その他のオプション]を開くと、[特定の受信者のみ][特定のドメインの受信者のみ][常に許可]といった選択肢が出ます。
どれを選んでも、そのセッションの間は確認が省かれます。送信と投稿では、ここを開かないでください。

どれに当たるかが分かれば、下の見出しから自分に関係のあるところだけ読めば足ります。

「もう来ている」と「まだ先」が、同じ表の上で両立する

AGIをめぐる話は、いま5つの別々の場所で、別々の中身で進んでいます。

どの立場かその立場が線を引いているものその立場から見た今
開発元の目標経済的に最も価値のある仕事で人間を上回る、高度に自律的なシステムまだ達していない、と経営者が8月末の取材で発言
能力の段階深さと広さの2軸で並べた段階。上から2番目が「熟練者の上位1%」「熟練した大人の半数に並ぶ」段階も未達、と枠組みの側が書いている
試験の成績人間と同じ効率で新しいことを学べるシステム名前にAGIが入る試験で、9月に99.9%が出た
法律「汎用AIモデル」。AGIという言葉は使っていない線は学習に使った計算の量で引かれている
契約契約の条件が切り替わる合図2026年4月の改定で、年で区切る書き方に変わった

食い違いがいちばんはっきり出るのは、表の2行目の「能力の段階」です。
これは能力の深さと、扱える範囲の広さの2つで、AIを0から5の段階に並べる枠組みです。

この枠組みを作った側は、自分から次の2つを書いています。

  • 開発元が掲げる「経済的に最も価値のある仕事で人間を上回る」という線は、上から2番目の段階に当たる
  • 今の対話AIはすでにAGIだ、という別の研究者の主張は、AIとして数える中でいちばん下の段階に当たる

つまり、同じ表の上で「もう来ている」と「まだ先」が、両方とも成り立ちます。
どちらの言い方も間違いではなく、指している段階が違うだけです。

熟練した大人の半数に並ぶ段階には、その文書が書かれた時点で公開されているどのシステムも達していない、と枠組みの側が書いています。

試験の成績で測る立場も、同じ食い違いを生みます。
名前にAGIが入る試験があり、9月に公開されたモデルはそこで99.9%を出しました。
試験を作った側は、AGIを「人間と同じ効率で新しいことを学べるシステム」と説明しています。
それでも開発元の経営者は、同じ時期の取材で「まだ」と答えています。

開発元どうしでも、使う言葉がそろっていない

もう1社の開発元は、公開している安全方針の文書でAGIという言葉を使っていません。
代わりに置いているのが「能力のしきい値」という考え方です。
危険な能力に届いたと判定されたら、防御の水準を1段上げる、という書き方をします。

その会社の経営者は、AGIははっきりしない言葉で誇張がまとわりついている、と書いたうえで、別の呼び方を使うと述べています。

同じ形の線引きは、もう一方の開発元も持っています。
9月に公開されたモデルは、サイバーセキュリティの能力が自社の枠組みで最も高い段階に達した、と発表されました。

会社が実際の運用で使っている線は、AGIかどうかではなく、危険な能力に届いたかどうかです。
2社とも、公開している安全の枠組みをその形で作っています。

法律が線を引いているのは、賢さではなく規模

EUのAI規制が定義しているのは「汎用AIモデル」です。
幅広い仕事をこなせるAIの本体、という意味の言葉で、人間並みかどうかという線は引かれていません。

規制が数字で線を引いているのは、学習に使った計算の量です。
その量が決められた値を超えたモデルは、影響が大きいものとして扱う、という決め方になっています。

この規制の線は、賢さではなく規模で引かれています。
「法律でAGIが定められた」という言い方を見たときは、この違いを疑ってよいところです。

契約の中のAGIは、1年で書き方が変わった

2025年10月、開発元と大手ソフト会社は、AGIが宣言されたら独立した専門家の集まりが検証する、と発表しました。
収益の分け前は、その検証まで続く、という書き方でした。
研究の成果を使う権利には、2025年10月の時点で2030年という期限も付いていました。
このときのAGIは、能力の話というより、契約が切り替わる合図でした。

2026年4月、両社は契約を改定したと発表しました。
新しい発表では、収益の分配は2030年まで、技術の進み方とは関係なく続く、と書かれています。
モデルと製品を使う権利が2032年までという点は、2025年10月の発表にもありました。
4月に変わったと書かれているのは、その権利が独占ではなくなったことです。

収益の分け方については、判定を待つ形から、年で区切る形に変わりました。
「AGI条項」という言葉を過去のニュースで読んだ人は、ここが古くなっているかもしれません。

事務の仕事で、もう動き始めていること

Microsoftは、本人の代わりに操作を実行する画面を出しています。
名前はCopilot Coworkで、Wordを開いたときに横に出るCopilotとは別のものです。
ブラウザで m365.cloud.microsoft を開くか、パソコンとスマホのCopilotアプリから使います。

ただし、使った分だけ費用がかかる仕組みだと書かれています。
会社で使えるようにするには、管理者がその課金を有効にする必要があります。
逆に、自分の画面から実際に使えているなら、管理者がすでにその費用の枠を作っています。
使った分は会社の請求に乗ります。

公式の説明に、できることとして挙がっているのは次のようなものです。

  • Outlookでメールを下書きし、返信・転送・送信する
  • 予定を作り、出席者を追加する
  • Word・Excel・PowerPoint・PDFを最初から作る
  • Teamsのチャネルやチャットに投稿する
  • OneDriveとSharePointのファイルを参照し、整理する
  • 決めた時刻に、同じ指示を自動で実行する

職場や学校のアカウントでは一般提供、個人のアカウントでは試験提供と書かれています。
会社で出てこないときは、順番待ちとは限りません。管理者の設定で決まります。

ChatGPT側でも、9月に公開されたモデルの説明に、画面の操作が入りました。
オンラインのフォームを埋める、顧客の記録を更新する、予定を整理する、といった書き方です。
自分の画面に何が出るかは、GPT-6 Astraで自分のChatGPTは何が変わるのか にまとめています。

これらは「AGIになったから」始まったことではありません。
AGIの判定とは関係なく、機能として配られています。

まだ来ていないこと、分かっていないこと

AGIに達したかどうかについて、開発元の経営者は8月末の取材で「まだ」と答えています。
そのうえで、年内に社内のシステムで自分がAGIと呼べるものができる、と述べました。
ここで言っているのは社内のシステムで、製品として配られるものではありません。

時期については、研究の側も言い切っていません。
同じ組織の別の文書では、時期は非常に不確かだとしたうえで、2030年までにありうる、という書き方をしています。

どの事務作業がいつ置き換わるか、という予定表は公表されていません。
今のところ分かるのは、配られている機能に何ができると書かれているかまでです。

会社のパソコンで、今日から気をつけること

代わりに操作する機能は、重要な操作の前に止まって許可を求めてきます。
危険度が中くらい以上の操作には、その表示が出ると書かれています。

  • 許可の画面が出たら、宛先と中身を読んでから、[送信]([投稿])のボタンをそのまま押します
  • そのまま押した分は、その1回だけの許可です
  • ボタンの横の[その他のオプション]には、[特定の受信者のみ][特定のドメインの受信者のみ][常に許可]といった選択肢が出ます
  • どれを選んでも、そのセッションの間は確認が省かれます。送信と投稿では、ここを開かないでください
  • 許可が重なると[すべて承認]が出て、一度に全部通ります。中身を読まずに押さないでください
  • 選んでしまったときは、サイドパネルの[アクセス許可]から取り消せます
  • 会社のアカウントで使えるかどうかは管理者が決めます。画面にCoworkが見えるのに使えないときは、その画面から利用を申請できます(管理者が承認します)。何も出てこないときは、申請の入口もありません

長く動く作業を任せて席を外すときは、戻れば終わっている前提で予定を組まないでください。
判断が要る場面では、返事を待って止まっていることがあります。

AGIがいつ来るかを追うより、m365.cloud.microsoft を開いて自分の画面に出るかを見るほうが、仕事は先に進みます。

確認範囲

  • 2026年9月5日時点の内容です。提供の範囲は日ごとに動きます
  • 扱ったのは、開発元と公的機関が公表している定義と、契約の書き方です
  • いつAGIが来るかは扱っていません。時期は分かっていません
  • 料金と、株や投資の話は扱っていません
  • 許可の画面の見え方と、機能が使えるかどうかは、契約と管理者の設定で変わります

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