この記事に出てくる用語
- PowerShell(パワーシェル) … Windowsに最初から入っている、命令を実行するための仕組み
- ターミナル … 命令を打ち込むための黒い画面。スタートボタンを右クリックして選ぶと開きます
- 拡張子 … ファイル名の末尾に付く「.pdf」のような目印。PowerShellで動かすファイルは「.ps1」
- パス … ファイルやフォルダの場所を1本の文字で表したもの。「C:\Users\taro\Downloads」のような形
- エクスプローラー … フォルダやファイルを開く、Windows標準の画面
結論:結果を分けるのは、コードではなく「頼み方」と「実行前の確認」
プログラミングを学ばなくても、パソコンの定型作業は自動化できます。
ChatGPTやClaudeなどのAIチャット(無料の範囲で足ります)に日本語で頼めば、動くコード(スクリプト)が返ってくるからです。
うまくいかない原因は、コードの中身ではなく、その前後にあります。
頼むときに何を伝えたか。実行する前に何を確かめたか。
この2つで結果が決まります。
向くのは、ファイルの振り分け、ファイル名の一括変更、複数のCSVファイル(カンマ区切りの表データ)の結合、バックアップのような、ルールの決まった繰り返し作業です。
1件ずつ繰り返すしかない操作が、件数に関係なく一度で終わります。
すでに書かせたコードが動かない・文字化けするなら「直し方の記事」へ。
AIへの頼み方
次の4つを伝えると、意図どおりのコードが返ってくる確率が大きく上がります。どのAIチャットでも共通です。
| 伝えること | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| ① 入力 | 何を対象にするか。場所と、ファイル名の実例 | 「C:\Users\自分のユーザー名\Downloads にあるPDF。名前は『請求書_2026-07.pdf』のような形式」 |
| ② 出力 | 終わったときにどうなっていてほしいか。これも実例で | 「D:\書類 の下に『2026-07』のような年月フォルダを作って、その中へ移動」 |
| ③ 環境 | どのパソコンの、何で動かすか | 「Windows 11 の PowerShell。追加のソフトを入れずに動くもの」 |
| ④ 失敗したときの動き | 想定外のことが起きたらどうしてほしいか | 「同じ名前のファイルが移動先にあったら、上書きせず飛ばして、最後に飛ばした一覧を表示」 |
③のPowerShellは追加のインストールが要りません(開き方は後の「受け取ったコードの動かし方」で)。
AIにはパソコンの中が見えないので、伝えないと別のOS向けのコードが返ることがあります。
④は最も抜けやすく、最も事故につながります。
想定外の場合(同じ名前のファイルがある・対象が1件も無い・移動先のフォルダが無い)にどうするかは、指定しない限りAIが決めます。
「古いファイルを移動して」の「古い」の基準も、「整理して」の振り分け方も同じです。
上書きでファイルが消えるのは、たいていこの指定漏れです。
しかもエラーで止まらず完走するため、画面の上では成功と区別が付きません。
そのまま使える頼み方の例
ダウンロードフォルダ(C:\Users\自分のユーザー名\Downloads)にあるPDFファイルを、
ファイルの更新日ごとに整理したいです。
・移動先は「D:\書類」。その下に「2026-07」のような年月フォルダを作って振り分ける
・移動先に同じ名前のファイルが既にあったら、上書きせずに飛ばして、
最後に飛ばしたファイルの一覧を表示する
・移動先のフォルダが無ければ作る
・Windows 11 の PowerShell で、追加のソフトを入れずに動くようにする
まず、実際には移動せずに「どのファイルがどこへ移動されるか」の一覧だけを
表示する版をください。問題なければ、そのあと実行する版をお願いします。
書き換えるのは「場所」の2か所です。1行目の「C:\Users\自分のユーザー名\Downloads」と、移動先の「D:\書類」。
書き換えるのは、あとでメモ帳に貼って保存したあとです。この画面の枠の中は直せません。
手で打ち直さず、実際の場所を表す文字(パス)を画面からコピーします。
フォルダの場所をコピーする手順
- エクスプローラーで対象のフォルダを開く。ダウンロードフォルダなら、左側の一覧の「ダウンロード」をクリック
- 画面上部のアドレスバー(今の場所が出ている横長の欄)の、場所の文字より右側の、何も書かれていないところをクリックする(Alt+Dでも同じ)。
表示が「C:\Users\taro\Downloads」のような文字に変わって選ばれる。
「ダウンロード」の文字の上をクリックしても、この表示にはならない - コピー(Ctrl+C)する
- 例の1行目のパスを消して貼り付ける(Ctrl+V)
「C:\Users\(何かの名前)\Downloads」の形になれば完了です。違う形の文字が出ても、コピーしたほうを使ってください。
移動先の「D:\書類」も同じです。
先にフォルダを作り(エクスプローラー左上の「新規作成」→「フォルダー」)、開いてパスをコピーします。
Dドライブが無ければ「ドキュメント」の中で構いません。
最後の2行(一覧だけを表示する版)は、後の「実行する前の安全確認」で説明します。
「動かなかった」の伝え方
- エラーメッセージは、全文をそのままコピーして貼る。 要約も打ち直しもしない。「動きませんでした」だけでは、AIは推測で直すしかありません
- 文字化けしたメッセージも、化けたまま貼ってよい。化け方が手がかりになります
- 結果だけが違うときは、「期待した結果」と「実際の結果」を実例で並べる
- 同じ会話の続きで頼む。新しいチャットでは、AIは前提を忘れています
受け取ったコードの動かし方
AIの回答のコード枠には、たいていコピー用のボタンが付いています。コピーした後の扱いが2通りあります。
| やり方 | 手順 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| (a) 画面に貼り付ける | ターミナルを開き、コードを貼り付けてEnter | 一度きりの処理。動くかどうか試す段階 |
| (b) ファイルに保存する | メモ帳に貼り付けて「.ps1」の形で保存し、ファイルとして実行(手順はこの章の後半) | 何度も使う処理。定期実行したい処理 |
(a)は、スタートボタンを右クリックして「ターミナル」を選び(通常はPowerShellの画面が開きます)、コードを貼り付けて(Ctrl+V)Enterを押すだけです。
「複数行を貼り付けようとしています」と確認画面が出たら、貼った内容が意図したコードかを見てから続行します。
最初は(a)で試してください。インストールも設定変更も要りません。
ただし会社のパソコンで使う場合は、動かす前に情報システム担当への確認を挟んでください。
技術的に動かせることと、職場のルールで認められていることは別です。
ソフトを入れられない職場は「入っている道具だけで自動化する」で扱っています。
毎週・毎月の作業の本命は(b)です。次からは実行するだけになります。
まず(a)で動くことを確かめ、動いてから(b)でファイル化する。
この順番なら、ファイルにした途端に動かなくなっても、保存の仕方の問題だと分かります。
ファイルに保存する手順(メモ帳でできます)
- メモ帳を開く(スタートボタンを押して「メモ帳」と入力)
- AIの回答のコードを貼り付ける(Ctrl+V)
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」を選ぶ
- 保存する場所を選ぶ(「ドキュメント」の中など)
- 「ファイルの種類」を「すべてのファイル」に変える
(最初は「テキスト ドキュメント (*.txt)」。変えずに手順6の「.ps1」を付け忘れると、
黙って「.txt」の付いたメモとして保存されてしまう)
- ファイル名を、末尾が「.ps1」になるように入力する(例:「PDF整理.ps1」)
- 保存画面の下の方にある「エンコード」を「UTF-8 (BOM 付き)」に変えて、保存する
エンコードを変えないと、日本語を含むコードで文字化けやエラーになることがあります。
保存したファイルを動かす手順
- 保存した「.ps1」ファイルを右クリックする
- 「PowerShell で実行」を選ぶ。
出てこなければ、いちばん下の「その他のオプションを確認」の中にあります - 黒い画面が開いて、処理が走ります
ダブルクリックでは実行されません。
初期設定ではメモ帳などで「開く」だけです。壊れてはいません。
うまくいったかは、指定した移動先を開いて確かめます。
「2026-07」のような年月フォルダができ、PDFが移っていれば成功です。
処理が終わると黒い画面は自動で閉じ、「飛ばしたファイルの一覧」は読む間もなく消えることがあります。
「処理の最後に、Enterキーを押すまで画面を閉じない一時停止を入れてください」と1行頼めば、読んでから閉じられます。
赤いエラー文(とくに「このシステムではスクリプトの実行が無効になっているため」で始まる文)や日本語の文字化けは、保存形式(文字コード)か、実行を止める安全装置(実行ポリシー)の問題です。
コードは直さず、エラー文も消さずに別記事へ。
決まった日時に動かしたくなったら、タスクスケジューラの基本へ。
実行する前の安全確認
AIの書いたコードは、たいてい意図どおりに動きます。
問題は、間違っていた場合の被害を小さくする構えが実行する側にあるかです。
ファイルを動かす・消すスクリプトの失敗は、書き直しが効きません。
理解の水準は「対象」と「動作」まで
全部の行を読める必要はありません。確かめるのは2点です。
- 対象: どのフォルダの、どのファイルに触るのか
- 動作: 読むだけか、コピーか、移動か、削除か
この2点を自分の言葉で言えないコードは実行しない、を線にしてください。
分からなければ、AIに「このコードが何をするか、1行ずつ日本語で説明してください」と頼みます。
それでもはっきりしないなら、作業を小さく割って頼み直します。
本番のフォルダでいきなり実行しない
テスト用のフォルダを作り、対象ファイルのコピーを数件入れて、まずそこで実行します。
AIには「まずテスト用フォルダ C:\test で試したい。場所をそこに変えた版をください」と頼みます。
意図どおりに動いてから、本番に戻します。
「見るだけの版」を先にもらう
頼み方の例の最後に付けた2行がこれです。
ファイルに触らず一覧だけを表示するコードなら、何度実行しても被害はゼロです。
消えてほしくないファイルが混ざっていないか、件数が想定どおりかを確かめてから、実行する版をもらいます。
移動や削除の命令の末尾に -WhatIf を足すと、何が起きるかの予告だけが出て、実際には何もしません。
「-WhatIf を付けた版をください」でも同じ確認ができます。
削除の命令が入っていなくても、ファイルは行方不明になる
PowerShellでファイルを移動する命令(Move-Item)は、移動先のフォルダが存在しないと、「移動」ではなく「ファイル名の変更」として動きます。
「報告書.pdf を C:\整理済み へ移動」を、C:\整理済み が無い状態で実行すると、報告書.pdf は「整理済み」という名前の、拡張子の無いファイルに変わります。
対象がたまたま1件だけだと、エラーも警告も出ません。
中身は残っていますが、名前も場所も変わっているので、消えたようにしか見えません。
なお、確かめたのは対象が1件のときまでで、複数件あるときにどうなるかは、この記事では確認していません。
頼み方の例の「移動先のフォルダが無ければ作る」は、これを防ぐためです。
手で作る運用は、作り忘れた1回で事故になります。「無ければ作る」をコードの側に入れてもらってください。
スクリプトの「削除」は、ごみ箱に入らない
エクスプローラーで削除したファイルは、通常ごみ箱に入ります。
しかしPowerShellの削除命令(Remove-Item)で削除したファイルは、ごみ箱に入りません。元に戻せません。
だから、削除を含む作業は頼み方を変えてください。
「削除して」ではなく、「『削除候補』という退避用フォルダへ移動して」と頼みます。
違いは、間違っていたときに戻せることだけです。
問題がなければ、退避用フォルダごと自分の手でエクスプローラーから削除します(手なら、ごみ箱を経由します)。
実行する前の確認
- このコードの対象と動作を、自分の言葉で言えるか
- コピーを入れたテスト用フォルダか、見るだけの版で、先に試したか
- 「削除」が入っていないか。入っていたら、退避用フォルダへの移動に変えてもらったか
判断基準:AIに書かせてよい作業、向かない作業
「AIが書けるか」では選べません。定型作業のコードはほとんど書けてしまうので、基準は作業の性質にあります。
| 判断軸 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 繰り返し | 毎週・毎月やる作業。1回きりでも対象が数十件を超える作業 | 1回きりで対象が数件の作業(手でやるほうが早い) |
| ルール | 「PDFは書類フォルダへ」のように、規則を1文で紙に書ける | 「要るファイルかどうかは見れば分かる」のように、人の判断が挟まる |
| 取り返し | 読む・数える・一覧にする・コピーする(元のファイルが残る) | 削除・上書き(前の章の退避方式に変えれば扱える) |
判断が挟まる作業も、判断と作業を切り離せば一部を任せられます。
「要るファイルの仕分け」はできませんが、「自分が先頭に○を付けたファイルだけ移動する」ならできます。
迷ったら、失敗しても元のファイルが無傷な作業から始めてください。
動かす前に聞き返して気づける間違いもあります。聞き方は「AIが自信満々に間違えたときの切り返し方」に。
この記事の確認範囲
押す場所と項目名は、Windows版の画面の話です。
- ⚠️ AIの回答は毎回違います。記事の例と同じコードが返るとは限らないので、返ってきたものを必ず自分で確かめてから使ってください
- AIサービスは更新が速く、回答の傾向も変わります
- 所要時間の目安は書いていません。作業内容で大きく変わるためです
- 会社のパソコンでは、管理者の設定によってスクリプトの実行が制限されていることがあります


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