この記事に出てくる言葉
- AGI … 「汎用人工知能」と訳される言葉。幅広い仕事をこなせるAI、という意味で使われる
- 条文 … 法律の本文。何をその法律の対象にするかを、言葉ごとに決めている部分がある
- 国際標準 … 国をまたいで用語や規格をそろえるための文書。AIの言葉をそろえたものがある
- シンギュラリティ … AIが人の知能を超える時点、という意味で使われる言葉
結論:法律に定義がある言葉と、用語集にだけある言葉と、どちらにも無い言葉がある
今すぐやること
社内のAI利用ルール(規程、入社時の資料)を開きます。
Ctrl キーを押しながら F を押すと、文書の中を探す欄が出ます。
Word・PDF・ブラウザのどれでも同じです。
⛔ Outlookでメールを開いた状態では押さないでください。Outlookの Ctrl+F は[転送]で、送信の画面が開きます。
メールの中を探すときは、いったん本文を別の場所に貼ってからにします。
探す欄に「AI」と入れて、見つかった言葉を書き写します。
「AI」で見つからなくても、決まりが無いとは限りません。
「人工知能」と書かれていることも、全角の「AI」で当たらないこともあります。
その2つでも探し直してください。
書かれ方は、だいたい次のどちらかです。
- 道具の名前(ChatGPT、Copilot など)… 何が対象かがはっきりしている
- 範囲の言葉(生成AI、AIツール、AI全般 など)… 何が対象かは決まっていない
後者だったときは、Wordの文章校正やメールの予測変換が対象に入るのかを、その文からは決められません。
「生成AI」という言葉には、法律にも、AIの言葉をそろえた国際的な用語集にも、定義が置かれていないためです。
決めているのはルールを書いた人なので、聞く先はそちらになります。
「AI」「人工知能」「AI」のどれでも出てこないときも、決まりが無いと自分で判断しないでください。
その文書に無いことが分かるだけで、別の場所に書かれていることがあります。
聞く先は上司か、情報システムの担当になります。
AIの言葉の出どころは、大きく3つに分かれます。
1つめは法律の本文です。
何をその法律の対象にするかを、言葉ごとに決めている条があります。
2つめは、国をまたいで用語をそろえるために作られた文書です。
AIの言葉を集めた用語集にあたるもので、以下ではこれを国際標準と呼びます。
3つめは、そのどちらにも見当たらない言葉です。
言葉ごとに、決まりの重さが違う
| 言葉 | どこに決まりがあるか |
|---|---|
| AIシステム | EUのAI規制の条文。定義を並べた条に載っている |
| 汎用AIモデル | 同じ条文。線は賢さではなく、学習に使った計算の量で引かれている |
| 人工知能関連技術 | 日本のAI推進法の条文。「この法律において〜とは」の形で置かれているのは、この1語だけ |
| 機械学習 | AIの用語をそろえた国際標準にある |
| 特化型AI(ナローAI・ANI) | 同じ標準にある。ただし載っている言い方は「ナローAI」 |
| AGI(汎用人工知能) | 同じ標準にある。ただし世の中の使われ方とは中身が違う |
| AIエージェント | 同じ標準にある。ただし今の製品で言う意味とは違う |
| 生成AI | 上の条文にも、この標準の用語の一覧にも項目が無い |
| 強いAI・弱いAI | 出どころは1980年の論文。今は別の意味でも使われる |
| ASI(超知能)・シンギュラリティ | 上の条文にも、この標準の用語の一覧にも出てこない |
⚠️ 「汎用AIモデル」と「汎用人工知能(AGI)」は、名前は似ていますが別のものです。
前者は法律の言葉で、線は学習に使った計算の量で引かれています。
後者は用語集の言葉で、扱える幅の話です。
表の上の3行は、対象の範囲が法律で決まっています。
続く4行は、国際標準に定義があります。
ただし、書き手が別の意味で使っていることがあります。
生成AIと、超知能・シンギュラリティは、そのどちらの一覧にも項目がありません。
強いAI・弱いAIだけは成り立ちが違うので、後ろの見出しで分けて扱います。
AIとAGIの違い
AIという言葉は、分野そのものを指します。
実際に動いている物のほうは、「AIシステム」と呼び分けられています。
AGIは、そのAIシステムを扱える幅で区切ったときの片側です。
反対側が特化型AIで、決まった仕事だけをこなすものを指します。
つまり「AIの上位版がAGI」ではありません。
「AIの中で、扱える幅が広いほうをAGIと呼ぶ」という関係です。
国際標準が置いている定義は、広い範囲の仕事を満足できる水準でこなすAIシステム、という書き方です。
人間並みという言葉は、この定義には入っていません。
そのうえで、同じ標準が注記でこう断っています。
AGIはもっと強い意味で使われることが多く、その場合は人間にできる仕事すべてを指す、と。
だから記事ごとに答えが変わります。
どの立場がどの線を引いているかは、AGIはいつ来るのか にまとめています。
AGIとAIエージェントは、比べているものが違う
AGIは能力の幅の話です。
AIエージェントは、仕事の進め方の話です。
国際標準のAIエージェントは、まわりを見て反応し、目標のために動く自動の仕組み、という定義になっています。
この書き方だと、いまAIと呼ばれていない古い自動制御も入ります。
一方、製品の説明で「AIエージェント」と言うときの意味は、そろっていません。
ある開発元は、自社の解説の冒頭にこう書いています。
長い時間ひとりで動き続ける仕組みを指す人と、決められた手順どおりに動く実装を指す人がいる、と。
その開発元自身は、道具の使い方を自分で決めるほうをエージェントと呼び、手順が先に決まっているほうは別の名前で呼んでいます。
資料でこの言葉を見たら、その文書の中で線がどう引かれているかを探してください。
見るところは1つです。
道具や順番を自分で決めるのか、決められたとおりに動くのか。
「強いAI」には2つの意味がある
出どころは1980年の論文です。
そこでの強いAIは、適切なプログラムを積んだコンピュータは道具ではなく心そのものだ、という立場を指します。
弱いAIは、コンピュータは心を調べるための強力な道具だ、という立場です。
機械が本当に心を持つかどうかの話でした。
一方、AIの用語をそろえた国際標準には、「強いAIと弱いAIから、汎用AIと特化型AIへ」という見出しの節があります(ここでの汎用AIは、上のAGIのことです)。
見出しの言い方からすると、古い呼び方を置き換える形で扱われています。
どちらかが間違いとは言えません。
資料でこの言葉に出会ったら、心の話なのか幅の話なのかを、前後の文から確かめることになります。
「学習」も2つの意味で使われている
- 作るときの学習 … AIを作る工程で、大量のデータから作り込むこと
- 使ったあとの学習 … 自分が入力した内容が、次の作り込みに回されること
社内で気にされるのは後者です。
ここは自分の画面で確かめられます。
自分の画面で確かめる
ChatGPTの場合は、画面のプロフィールアイコンを押して[設定]を開き、
[データコントロール]を選んで、[すべての人のためにモデルを改善する]という欄を探します。
スマホでは、横から出るメニューでプロフィールアイコンを押し、[データコントロール]を選びます。
これが、使ったあとの学習にあたります。
スイッチがオフなら、入力した内容は次の作り込みに回りません。オンなら回ります。
会社が契約している法人向けのプランについては、
入力した内容は既定では学習に使わない、と説明されています(組織のほうから申し出た場合は別です)。
資料でこれらの言葉に出会ったとき
- 条文にある言葉が使われている … 対象の範囲が決まっている。読み手が広げたり狭めたりしない
- 標準にある言葉が使われている … 定義はあるが、その文書の中の説明が優先される
- そのどちらにも見当たらない言葉が使われている … 書き手の整理として読む
特化型AIからAGIへ、その先に超知能へ、という3段階の並びをよく見かけます。
特化型AIとAGIは、上の表のとおり国際標準に載っています。
見当たらないのは、この3つを段階として並べた形のほうです。
EUの規制で定義を並べた条にも、日本のAI推進法の全文にも、その国際標準の用語の一覧にも、この並びは出てきません。
よく一緒に語られるシンギュラリティという言葉も、同じ3か所には見当たりません。
使うのが悪いわけではありません。
分かりやすい整理なので、説明のために置かれています。
ただし、決まりとして引くと足元が抜けます。
これらの言葉の意味をAIに聞くと、その場でそれらしい答えが返ってきます。
どの文書に載っているかまで合っているとは限らないので、答えの確かめ方は
AIが自信満々に間違えたときの切り返し方 にまとめています。
確認範囲
- 2026年9月5日時点の内容です
- 扱ったのは、EUのAI規制と日本のAI推進法の条文、AIの用語をそろえた国際標準、開発元が公開している解説です
- 日本語の言い方は、原文の言葉に当てたものです。条文や標準の公式な日本語訳ではありません
- どの言葉が正しいかは決めていません。どこに決まりがあるかだけを並べています
- 会社のルールで何が禁止されているかは、この記事では分かりません
- ChatGPTの設定の名前と場所は、プランや版によって変わることがあります

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